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【コラム】不妊治療が保険適用に
【読むのに】約5分
【執筆】独立系FP事務所 コモングッド 編集部(22年4月)
ママになる方へ、うれしいニュース
「不妊治療が保険適用へ」
独立系FP事務所のコモングッドです。
2022年4月より、不妊治療が保険適用となりました。
不妊治療についてや、保険適用となる条件、治療にかかる費用を見ていきたいと思います。
これまで不妊治療は、病院により自由に治療費が設定されていたため、地域によりバラつきがありました。
また、1回30万円の助成金や、過去には所得制限による支援制度がありました。
2022年4月の改定により、今回の改定で一定の治療においては全国一律の価格(原則、3割負担)となります。
そもそも不妊とは?
避妊をせず定期的な性交渉を1年以上行っても、妊娠に至らない状態のことです。(WHOによる定義)
現在、不妊の検査や治療を受けたことがあるカップルは5.5組に1組と言われています。
保険適用となる夫婦の条件は?
次に、保険適用となる条件について解説していきます。
- 治療開始時点での女性の年齢が43歳未満
- 男性側の年齢制限はない
- 事実婚のカップルも対象
ただし、43歳未満でも、年齢によりこども1人につき保険適用となる回数に制限があります。
- 40歳未満:最大6回まで
- 40歳以上43歳未満:最大3回まで
※ この回数は"胚移植"の回数であり、採卵回数に制限はありません。
保険適用となることのメリット・デメリット
メリット
【1】経済的負担が減る
【2】出産に対して、前向きに検討できるようになる
これまで、体外受精の1周期あたりの費用は「30万円以上40万円未満」を支払ったカップルが最も多く、治療の継続が困難なカップルも少なくありませんでした。
今後は体外受精も3割負担となるので、40万円かかった場合は実際の支払い額が12万円となります。 また、保険が適用されることで、高額療養費制度の対象となります。1ヵ月あたりの上限が決まるため、費用負担はさらに軽減できます。
(参考リンク)高額療養費制度について
デメリット
【1】提供される医療の標準化
治療が標準化されることで、それぞれの患者の状態に合わせた個別の医療が提供ができなくなるおそれがあります。
【2】助成金制度よりも負担額が増える場合もある。これまでも年齢と回数の制限はあるものの、体外受精や顕微授精などの特定不妊治療と呼ばれる治療に対し、最大30万円を支給する助成金制度がありました。
仮に特定不妊治療で40万円の費用がかかったとすると、保険適用前の助成金制度では30万円の支給で10万円負担となり、保険適用後では3割負担で12万円です。
つまり、治療にかかった金額によっては、保険適用よりも助成金制度利用での自己負担が軽くなるケースが発生してしまいます。
この助成金制度は保険適用開始と同時に廃止されますが、年度をまたぐ1回の治療については経過措置として助成金が支払われます。
以下のガイドラインに定められた治療法以外のものを選択すると、3割負担 + 全額自己負担(助成金なし)となり、今まで以上に負担が大きくなる可能性があるのです。
保険適用になる不妊治療とは?
今回の改定に合わせて、一般社団法人日本生殖医学会のガイドラインなどで有効性・安全性が確認された以下の5つの治療について、保険適用の対象となります。
(引用:厚生労働省 不妊治療の保険適用 リーフレット)
ガイドラインの推奨度A・B・Cのうち、保険適用となるのはAとBに該当する治療となります。また、流産などのリスク回避に効果のある着床前診断も、今回の保険適用は見送られました。
以下、それぞれの治療についての概要です。
タイミング法
基礎体温や超音波検査、尿中LH検査などを参考にしながら排卵日を予測し、「最も妊娠しやすいタイミングに性交渉を行う」方法です。
最も自然妊娠に近く、不妊治療のファーストステップとなります。
人工授精(AIH)
受精の場である卵管膨大部に、洗浄精製選別した良好な精子を子宮腔内に注入する治療法です。
受精・着床後の流れは自然妊娠と同じです。
体外受精
膣から針を刺して卵巣から卵子を取り出し、取り出した卵子と大量の精子を体外で受精させます。
その受精卵を妊娠しやすい時期に子宮に戻す治療法です。
自然妊娠や人工授精と比べ受精までの道のりが短いため、高い妊娠率を期待できます。
顕微授精
1つの精子を注射針などで直接卵子に注入し、受精を促す治療法です。
精子が少ない方や精子の運動数が少ない方、通常の体外受精では受精できない方などが適応となります。
この治療法での受精率は平均して約60~70%であり、この方法でも受精しないこともあります。
胚培養・胚凍結・胚移植
体外受精や顕微受精によって得られた受精卵が育つと"胚"と呼ばれるようになります。
- 胚培養
胚を育てること。
- 胚移植
培養した胚を子宮内へ移すこと。
- 胚凍結
条件によって異なりますが、受精後2~7日間、培養した胚を凍結します。凍結胚は次周期以降に融解して胚移植を行います。
(参考)保険適用となった場合の費用は?
厚生労働省の調査によると、体外受精と人工授精にかかる負担金は以下のように変更となっています。
▼体外受精
1回あたり 65,400円~
▼人工授精
1回あたり 5,460円~
▼採卵
採卵基本料 9,600円 + 採卵毎加算分
1個 7,200円
2~5個 10,800円
6~9個 16,500円
10個以上 21,600円
▼受精法(①~③のいずれかを選択)
①体外受精 12,600円
②顕微授精(ICSI) 1個 14,400円
2~5個 20,400円
6~9個 30,000円
10個以上 38,400円
③Split(①②両方実施) 顕微授精代+6,300円(体外受精の半額)
※ 卵子の活性化を行った場合、+卵子調整加算3,000円(実施時のみ)
※ 精巣内精子使用の場合 +15,000円
▼受精卵・胚培養管理料(採卵翌日から、受精個数毎に加算)
1個 13,500円
2~5個 18,000円
6~9個 25,200円
10個以上 31,500円
まとめ
不妊の原因は千差万別で、標準医療で効果が出る方もいれば、そうでない方もいるのも事実です。
厚生労働省では、質の高い生殖補助医療が行えなくなる 医療の質が低下することで妊娠・出生率の低下を招く可能性があるとの懸念も述べられています。
不妊治療の内容を医師とよく相談し、自己負担の費用はどこまで許容できるか検討しましょう。
保険が適用されても不妊治療には引き続き、ある程度の費用がかかります。どうしても子どもがほしいと考えている方は、家計の状況を確認し、費用の総額がいくらまでなら治療を続けることができるのか、マネープランを見直していくことも大切です。
また、可能ならば妊娠率が少しでも高まるように、そして治療期間や費用を最小限に抑えることができるように、早めに早めに治療に取り組むといいでしょう。
今まで経済的な問題を理由に不妊治療をあきらめていた方にとって、不妊治療の保険適用は大きな支えとなります。不妊治療による妊娠を希望する方は、経済的な面でも計画的に治療を進めていきましょう。
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【参考資料】
・厚生労働省 不妊治療の実態に関する調査研究について
・厚生労働省「2021年11月17日 中央社会保険医療協議会 総会 第497回議事録」
・厚生労働省「不妊治療の保険適用について懸念されること」