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【コラム】不動産投資、経費になるもの・ならないもの
【読むのに】約5分
【執筆】独立系FP事務所 コモングッド 編集部(21年8月)
「経費って、これでいいのかな?」
独立系FP事務所のコモングッドです。
不動産投資・賃貸経営をしていると年に1回確定申告を行わなければなりません。不動産投資・賃貸経営をスタートした後に、悩むことの1つが「経費」や「領収書」です。
確定申告が初めての方は、「これでいいのかな?」と思いながら、領収書を元に自分の経費を計算していくことになるかと思います。
そもそも、不動産投資における「経費」とはどういったものでしょうか。また、そのなかにある「雑費」とよばれるものは、どのような内容が対象になるでしょうか。今回は、不動産投資・賃貸経営における「経費」や「領収書」について紹介します。
そもそも、税金はどう計算される?
本題の前に、不動産所得と税金についてまず整理します。 不動産所得は、年間の総収入金額から必要経費を差し引いて算出します。 計算式は以下の通りです。
不動産所得=不動産収入-必要経費
不動産所得を算出するためには収入金額を正しく計算することも大切ですが、 必要経費を正しく理解し正確に計上することも大切です。
経費とは?
次に、経費の定義から見ていきます。国税庁によると、不動産所得における経費とは以下をいいます。
引用:No.2210 やさしい必要経費の知識|所得税|国税庁
- 総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額
- その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額
そして、確定申告をする際の経費の科目には、次のような項目があらかじめ用意されています。 今回は白色申告の際に使う収支内訳書を使って説明します。
収支内訳書の科目の中で通常使う欄は、まず下記の太字の科目です。
- 減価償却費
- 借入金利子
- その他の経費
- 租税公課
- 損害保険料
- 修繕費
- (空欄)
- 雑費
減価 償却費 |
耐用年数にしたがって毎年計上します |
---|---|
借入金 利子 |
不動産投資ローンの利子を計上します |
租税 公課 |
初年度なら不動産取得税や契約時にかかる印紙代等、以後は固定資産税と都市計画税などを計上します |
損害 保険料 |
火災保険料、地震保険料 |
それぞれ細かく見ていきます。
減価償却費
建物の取得費を耐用年数に応じて毎年計上する費用を減価償却費といいます。減価償却費はその年に現金の支出はありませんが、経費として計上できます。
借入金利子
不動産投資ローンを使って不動産を購入した場合、金融機関に毎月返済をします。返済金額のうち、利子を経費計上できます(ただし、不動産投資で赤字になった場合には制限があります)。
租税公課
不動産投資に関する税金の中で計上できるものは、次の通りです。
不動産の購入時にかかる税金
- 登録免許税
- 不動産取得税
- 印紙税
不動産を所有することに対してかかる税金
- 固定資産税
- 都市計画税
(注)住民税や所得税は経費には計上できません
損害保険料
投資用マンションにかけている火災保険・地震保険などの保険料は、期間の経過に応じて全額経費できます。
修繕費
修繕費は、内容や金額によって判断します。「原状回復のための支出」「かかった費用が60万円未満」であれば、経費として一括計上できることとなります。
退去のタイミングで発生する壁紙の張り替えや鍵の交換、ハウスクリーニングは、通常の維持管理や修理のために支出されるものとして、修繕費となります。
また、温水洗浄便座やエアコンの取り替え費用などの比較的小規模の交換等も、原状を回復する費用として修繕費になります。不明な場合、国税局が電話相談も受け付けています。詳しくは国税庁のページをご覧ください。
空欄
「その他の経費」の中に、科目があらかじめ入っていない欄が設けられています。ここには、自分で何を入れるかを設定できます。例えば、不動産投資に関わる次のような費用です。
- 修繕積立金
- 管理費
- 管理委託費(賃料振込や入退去の対応等)
- 広告宣伝費(入居者募集)
マンションの長期の修繕計画に基づいた修繕積立金や、マンションの清掃等の費用である管理費、それに所有している物件を賃貸に出した場合に管理会社へ支払う管理委託費なども経費になります。入居者を募集するために広告宣伝費を使った場合にも、経費として計上できます。
空欄には、自分で文字を記入します。例えば「管理費等」などと記入したうえで費用を計上します。毎年、使った費用を計上する科目が変わらないようにした方がいいでしょう。
ここまでに紹介した費用に当てはまらないものを、雑費として計上することが可能です。もちろん、上記の経費と同様、不動産投資にかかった費用でなければなりません。
雑費として計上できる内容には以下のような費用が挙げられます。
- コピー代:管理組合の資料をコピーするなど
- 飲食費、交通費:不動産会社との打ち合わせ時のお店代や、往復交通費など
- 新聞図書費:不動産投資に必要な書籍代、セミナー参加費等
ただし、これらを「雑費」とはせずに、先ほどの空欄を用いて計上することも可能です。国税庁の収支内訳書の書き方には、雑費は「業務上の費用で他の経費に当てはまらないもの経費」とされています。
確定申告で雑費を計上するときの注意点
[1] 不動産投資に関連のないものを計上しない
雑費に限らず、当たり前の前提ですが、経費は不動産投資を行うのに関連していることが必要です。したがって、個人での使用と混じってしまいがちな交通費や通信費、交際費などは、扱う際に「それは不動産経営に関連すると説明できるか?」を常に意識しましょう。
例えば、事業と個人的な予定とを兼ねて外出をする場合、不動産投資に関係する旅費と、それ以外の個人的な旅費を区別しなければなりません。不動産投資に関係しているもののみが経費として認められるので、そのことを証明できるよう、領収書や時間などもメモし、あとから参照できるように残しておきましょう。
また、携帯電話やインターネットの使用料も業務での使用と個人利用分を区別しましょう。業務での使用と個人利用分の割合によって費用を計上します。
[2] 高額な支出を雑費に計上しない
繰り返しになりますが、雑費はあくまでも少額で、重要性の乏しい経費を計上するための科目です。定期的に発生する、または高額な出費は雑費とせず、適切な科目で計上しましょう。
[3] 雑費の金額はどのぐらいが目安になる?
過去にご相談をいただいた方を見てみますと、例えば東京都内の中古1Kマンション1部屋(年間の家賃収入 約100万円)あたり、およそ10-30万円の雑費を計上している方が多いです。
オーナーさんの方針次第にはなりますが、雑費を多く使われている方は50-70万円ほどの方も中にはいます。
領収書はどうもらったらよい?
領収書とは、「受取人が支払者から代金を受け取ったこと」を証明する書類のことです。
企業に勤めている人が経費精算を行うために経理担当者に提出したり、個人事業主が確定申告を行ったりする際に使われます。会社員の方は経費という概念があまりなく、領収書をもらう習慣がないかと思いますので、領収書のもらい方をシェアします。
代表的な領収書の取得方法
飲食店
お会計の際に「領収書ください。」と言ってください。
宛名と但し書きを聞かれると思いますので、宛名はご自身のお名前や会社名にし、飲食店ですと、但し書きは、内容に沿って「飲食代」「会議費」「施設利用代」などとするケースが多いです。
通販(Amazon/楽天/Yahoo!ショッピングなど)
購入履歴からダウンロードできます。楽天/Yahoo!などは購入したお店に問合せしないともらえないケースがあるので要注意です。
但し書きは、内容に沿って「備品代」「書籍代」などとするケースが多いです。
まとめ
経費を適切に計上することは、不動産投資・賃貸経営を思い通りに進めるために非常に大切です。
確定申告は年に1回ですので、何となく1年が過ぎてしまうと、毎年2-3月の確定申告の際に「あれ?思っていたより経費が少ない!」「領収書どこいったっけ?」となる可能性があるので、日々意識して管理していきましょう。
※本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、より個別的な、不動産投資・ローン・税制等の制度が読者に適用されるかについては、読者において各記事の分野の専門家にお問い合わせください
【執筆】独立系FP事務所 コモングッド 編集部(21年8月)